
こんにちは、ONLYPRODUCTS株式会社の代表、言美友宏です。
「60歳、70歳になっても現場に立ち続けるのか?」「引退したら収入がゼロになる」「結局、廃業して終わりなのか?」
こんな将来への漠然とした不安を抱えているのではないでしょうか?この不安の正体は「出口戦略を知らない」ことにあります。
出口戦略とは、事業をどのように終わらせるか、または次のステージにどう移行するかを計画することです。
多くのオーナーは「美容室は廃業するしかない」と思い込んでいますが、実は事業を売却して対価を得る方法があります。
2024年度、美容室の倒産件数は197件と過去最多を記録しました。
一方で、M&A(事業売却)によって数百万円から数千万円の売却益を得て、新しい人生をスタートさせるオーナーも増えています。
この記事では、美容室オーナーが知るべき出口戦略の全体像、特にM&Aに焦点を当てて、売却するための条件、準備、そして将来の不安から解放される方法を詳しく解説します。
Contents
美容室オーナーに出口戦略という発想を
独立して美容室を開業する時、誰もが「成功させたい」「売上を伸ばしたい」と考えます。
しかし、「どうやって引退するか」「事業をどう終わらせるか」を考える人はほとんどいません。
その結果、以下のような状況に陥ります。
- 60歳を超えても現場に立ち続ける
- 体力の限界を感じても辞められない
- 廃業する時には価値ゼロで終了
- 老後資金が不足する
しかし、出口戦略は「事業の終わらせ方」ではありません。出口戦略とは、「人生の選択肢を増やし、自由を手に入れるための設計図」です。
出口戦略を持つことのメリット
出口戦略を持つことで、以下のようなメリットが得られます。
1. 技術依存ビジネスの限界を突破できる
技術サービスだけのビジネスモデルには、明確な限界があります。
- 働かないと売上ゼロ
- 体力の限界がある
- 時間の切り売りで単価に上限がある
- 病気・怪我で収入が途絶える
しかし、出口戦略を見据えて事業化すれば、技術依存から脱却できます。
オリジナル商品の開発、ブランド構築、仕組み化によって、あなたがいなくても価値を生み出す事業に変えることができるのです。
2. 40代・50代になってからのキャリアを描ける
「このままでいいのか?」という不安は、キャリアの先が見えないことから生まれます。
出口戦略があれば、以下のような選択肢が明確になります。
- 55歳で事業を売却して、セカンドキャリアをスタートする
- 60歳でスタッフに事業承継し、顧問として残る
- ブランド事業に転換して、現場から離れる
- フランチャイズ化して、不労所得を得る
ゴールが見えているからこそ、今やるべきことが明確になり、迷いなく経営に取り組めます。
3. 将来の自由度が圧倒的に高くなる
出口戦略を持つ最大のメリットは、「選択肢が増える」ことです。出口戦略がある場合は、以下のような選択肢を持てます。
- 事業を売却して数百万円〜数千万円の対価を得る
- 老後資金を一括で確保できる
- 新しい事業に挑戦できる
- 家族との時間を増やせる
- のんびり暮らすこともできる
出口戦略があるからこそ、人生を主体的に設計できるのです。
「一生現場に立ち続けるしかない」という不安なく、「いつでも引退できる」という安心感を持ちながら経営できるのが、出口戦略を持つ最大の価値です。
主な出口戦略の種類
出口戦略には、主に以下の4つの選択肢があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解しておきましょう。
M&A(事業売却)
M&A(Mergers and Acquisitions)とは、合併と買収のこと。美容室オーナーには最も現実的な選択肢です。
準備をしっかり行えば、1店舗の小規模サロンでも売却可能です。
美容室の場合、多くは「事業譲渡」という形式で、自社の事業を第三者(企業や個人)に売却します。
ただし、黒字経営であること、ブランド力・固定顧客がある、仕組み化されているなどの条件があります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・数百万円〜数千万円の売却益が得られる ・顧客・スタッフを守れる(雇用継続) ・準備期間が3〜5年程度 ・老後資金を一括で確保できる | ・買い手が見つからない可能性がある ・個人依存のサロンは売却困難 ・想定より低い金額になることもある |
価値がつく美容室・サロンの条件については、この記事内の「M&Aで価値がつく美容室の条件」で詳しく解説していますので、そちらもご確認ください。
IPO(株式上場)
IPO(Initial Public Offering)とは、株式上場のことです。
会社を証券取引所に上場させ、株式を一般に公開します。創業者は保有株式を売却することで、大きな対価を得られます。
年商数十億円以上の大規模企業や、複数店舗・大規模チェーンなどが対象の企業です。
また、IPOには、高い成長率を維持しており、上場基準を満たす財務体質であるなどの条件があります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・数億円〜数十億円の売却益が得られる ・社会的信用が大幅に向上する ・資金調達が容易になる | ・準備期間が10年以上かかる ・上場費用が数千万円〜数億円必要 ・株主への説明責任が生じる ・経営の自由度が下がる |
IPOは一部の大手美容室チェーンのみが選べる選択肢であり、個人サロンや小規模チェーンには現実的ではありません。
事業承継(家族・スタッフへの引き継ぎ)
事業承継とは、息子・娘、またはスタッフにサロンを引き継ぐ方法です。経営権を譲渡し、自分は引退または顧問として残ります。
事業承継はサロンの理念を継承し、段階的に引退したいというオーナーに向いている選択肢です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・サロンの理念が継承される ・顧客・スタッフが安心する ・段階的に関わり方を減らせる ・家族内であれば税制優遇がある | ・後継者の育成に5〜10年かかる ・経営能力がないと失敗する ・売却益が得られないことが多い ・家族内承継の場合、親族トラブルのリスク |
後継者がいる場合は有効な選択肢ではあるものの、後継者の育成には長い時間が必要です。
廃業(価値ゼロで終了)
廃業とは、サロンを閉めて引退することです。設備を処分し、賃貸契約を解除します。
価値がなく、他の選択肢を採るのが難しい方、シンプルに引退したい方が採る選択肢です。廃業後の資金を確保しておく必要があります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・シンプルで分かりやすい ・責任から解放される | ・売却益がゼロ ・顧客・スタッフに影響が出る ・原状回復費用などコストがかかる ・今までの努力が資産にならない |
廃業は、最も避けたい選択肢。準備不足の結果として廃業に至るケースが多く、経済的にも精神的にも損失が大きいです。
M&Aで価値がつく美容室の条件
M&Aで売却できるサロンには、明確な条件があります。以下の5つの条件を満たすことで、買い手にとって魅力的な事業となり、高値での売却が可能になります。
① 個人依存ではない(仕組み化されている)
最も重要な条件は、オーナー個人に依存していないこと。オーナーがいなくても以下のような状態を維持できることが求められます。
- 売上が維持できる
- スタッフが自律的に動ける
- 業務マニュアルが整備されている
- 店長・リーダーが育成されている
- オーナーの指名売上が全体の30%以下
仕組み化されたサロンは、買い手にとって「買収後も安定して運営できる」という安心材料になります。
② 財務が健全である(黒字・キャッシュフロー良好)
赤字のサロンは買い手がつきません。最低でも以下の条件を満たす必要があります。
- 2〜3期連続で黒字経営
- キャッシュフローがプラス(お金の流れが健全)
- 無駄な借入金が少ない
- 財務諸表が正確に管理されている
財務が健全であることは、事業の継続性を証明する最も重要な要素です。
③ 顧客基盤が強い(固定客・リピート率が高い)
安定した顧客基盤があることも重要です。
- リピート率が70%以上
- 固定客が多い(月に1〜2回来店する顧客)
- 顧客データベースが整備されている
- 口コミ・評判が良い
顧客がサロンに対して愛着を持っており、オーナーが変わっても通い続けてくれる。この状態が理想的です。
④ 事業が法人化されている
個人事業主のままでは、M&Aはほぼ不可能です。法人化は必須条件です。法人化することで以下のメリットがあります。
- 事業の価値を明確化できる
- 株式譲渡という形でスムーズに売却できる
- 買い手にとって安心感がある
- 財務諸表が整備されている
まだ個人事業主の方は、まずは法人化を目指しましょう。
⑤ ブランド価値がある(最重要)
M&Aにおいて、最も価値が高いのは「ブランド」です。ブランド価値があるサロンは、以下のような特徴を持っています。
- オリジナル商品がある(ヘアケア商品、スタイリング剤など)
- SNS・Webでの認知度が高い(Instagram、TikTok、YouTubeなど)
- 地域でのポジションが確立されている(「◯◯といえばこのサロン」)
- 店舗以外の収益源がある(物販、BtoB販売、教育事業など)
ブランド価値があると、売却価格が2倍〜3倍以上に上がります。というのも買い手は「ブランド」という無形資産を買うから。
そして、ブランド価値を最も高めるのが「プロフェッショナルブランド」です。
プロフェッショナルブランド事業と美容室をセットにする必要はなく、プロフェッショナルブランド事業のみを売却するという選択肢も採れます。
美容室オーナーができる事業化の種類
M&Aで売却できるサロンにするには、「事業化」が必要です。事業化には、大きく分けて3つの種類があります。
① 店舗ビジネス(現場)
仕組み化された店舗だけでも売れるが価値がつきにくい。
これは、多くのオーナーがすでに行っている「技術サービスを提供する」ビジネスです。
- カット、カラー、パーマなどの技術サービス
- 店舗での接客・施術
- 物販(店頭販売)
これだけでは、オーナー依存のビジネスから抜け出せません。次の2つの事業化が必要です。
② 運営ビジネス(仕組み化・人材育成)
運営ビジネスとは、「店舗を運営する仕組みそのもの」を事業化することです。
- 業務マニュアルの整備
- スタッフ育成プログラム
- 評価制度の構築
- オペレーションの標準化
- 店長・リーダーの育成
仕組み化することで、オーナーがいなくても店舗が回る状態を作ります。これがM&Aでの評価を高める基盤になります。
③ プロフェッショナルブランド(商品事業)
プロフェッショナルブランドとは、オリジナル商品を開発し、ブランドとして展開する事業です。
- ヘアケア商品の開発(シャンプー、トリートメント、スタイリング剤など)
- サロン専売品としての販売
- 全国の美容室へのBtoB展開
- EC販売
この3つ目の「プロフェッショナルブランド」こそが、出口戦略の鍵となります。
技術サービスは、オーナーやスタッフが働かなければ売上になりません。しかし、商品は違います。一度商品を開発すれば、以下のようなメリットがあります。
- オーナーがいなくても売れる
- 全国どこでも販売できる
- 24時間365日売上が発生する(EC販売)
- 在庫さえあれば無限に売れる
商品は「再現性の塊」です。一度作れば、あなたが働かなくても価値を生み出し続けます。
プロフェッショナルブランドを持つことで、収益源が多様化します。
収益源が複数あることで、不況に強い経営が実現できます。一つの収益源が落ちても、他でカバーできるからです。
プロフェッショナルブランドが出口戦略の鍵になる
なぜプロフェッショナルブランドが出口戦略において重要なのか?その理由を解説します。
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内容の指示: 店舗ビジネスとプロフェッショナルブランドが相互作用を起こす図解。店舗ビジネス(現場)、運営ビジネス(仕組み)、プロフェッショナルブランド(商品)の3つが連携して価値を高める構造図
Alt属性案: 美容室の3つの事業化と相互作用の図解

M&Aにおいて、商品事業を持つサロンは圧倒的に高く評価されます。
例えば以下のようなケースです。
- 技術サービスのみのサロン: 年間営業利益500万円 → 売却価格1,000〜2,500万円
- 商品事業を持つサロン: 年間営業利益500万円 → 売却価格3,000〜5,000万円
同じ営業利益でも、商品事業があるだけで売却価格が2倍以上になることもあります。なぜなら、買い手は「継続的に収益を生む仕組み」を評価するからです。
美容師は、商品開発において圧倒的な優位性を持っています。
- 現場の声を知っている: 顧客が本当に求めているものが分かる
- 髪質・頭皮の知識がある: 効果的な成分配合を提案できる
- 使用感を検証できる: 自分の店舗で実際に試せる
- 信頼がある: 既存顧客がファーストユーザーになってくれる
美容師だからこそ作れる商品。それがプロフェッショナルブランドです。
美容室オーナーのための「出口戦略ロードマップ」
ここでは、個人事業主の美容室オーナーが、出口戦略(M&A)を見据えて今から準備すべきことを、6つのステップで解説します。
※すでに法人化されている方は、STEP3の法人化部分はスキップしてください。
STEP1:現状の棚卸し(強みの発掘・方向性の創出)
まずは、自分のサロンの現状を正確に把握することから始めます。
棚卸しすべき項目:
- 売上構造: 月間売上、年間売上、利益率
- オーナー依存度: オーナーの売上が全体の何%を占めているか
- 顧客基盤: リピート率、固定客の数、新規客の獲得率
- スタッフ状況: 人数、技術レベル、定着率
- 強み: 他のサロンにない独自の強みは何か
- 弱み: 改善すべき課題は何か
そして、以下のような方向性を考えます。
- 何年後に出口を迎えたいのか?(50歳?55歳?60歳?)
- どの出口戦略を目指すのか?(M&A?事業承継?)
- どんなブランドを作りたいのか?
ゴールが明確になれば、今やるべきことが見えてきます。
STEP2:個人依存から脱却(仕組み化・権限移譲)
次に取り組むべきは、オーナー個人への依存度を下げることです。
| 1.業務のマニュアル化 | ・カット、カラー、接客などの業務を標準化 ・誰がやっても同じ結果が出る仕組みを作る |
|---|---|
| 2.権限移譲 | ・店長・リーダーを育成する ・スタッフに責任を持たせる ・オーナーがいなくても判断できる体制を作る |
| 3.現場から離れる | ・週の半分は経営業務に充てる ・徐々に現場から離れる |
オーナー依存度が30%以下になることを目指しましょう。
STEP3:代理店事業でブランド事業の基礎を学ぶ
いきなりオリジナルブランドを立ち上げるのはハードルが高いです。まずは代理店ビジネスから始めることをおすすめします。
ONLYPRODUCTSの「mm.(ムム)」:
- 低リスクで商品販売のノウハウを学べる
- 売れている商品をテストマーケティングできる
- 在庫リスクを抑えながらスタートできる
- ファイナンスの基礎を実践で学べる
mm.で経験を積むことで、将来的な独自ブランド立ち上げの準備ができます。
STEP4:法人化・財務管理の強化
M&Aを視野に入れるなら、法人化は必須です。
法人化のメリット:
- 事業の価値を明確化できる
- 株式譲渡という形でスムーズに売却できる
- 税制上の優遇措置を受けられる
- 対外的な信用が高まる
また、財務管理の強化も同時に進めます。
- 黒字化: 2〜3期連続で黒字を維持
- キャッシュフローの改善: お金の流れを健全化
- 借入金の返済計画: 無駄な借入を減らす
- 財務諸表の整備: 正確な決算書を作成
税理士と連携しながら、買い手が安心できる財務体質を作りましょう。
STEP5:プロフェッショナルブランドの立ち上げ(事業化)
mm.で経験を積んだら、次は独自のプロフェッショナルブランドを立ち上げます。美容師だからこそ作れる、現場の声を反映した商品。それがプロフェッショナルブランドです。
開発すべき商品例:
- ヘアケア商品(シャンプー、トリートメント)
- スタイリング剤
- 頭皮ケア商品
- サロン専売の特別メニュー用商材
これらを開発し、自店舗で販売しながら、全国の美容室へBtoB展開していきます。
STEP6:店舗+ブランドの二軸経営にする
プロフェッショナルブランドが軌道に乗ったら、店舗事業とブランド事業の二軸経営を確立します。
二軸経営のメリット:
- 収益源が複数になり、経営が安定する
- 店舗の売上が落ちても、ブランド売上でカバーできる
- M&Aでの評価が飛躍的に高まる
- 店舗だけ売却、ブランドだけ売却、両方売却など、選択肢が広がる
そして、運営ビジネスのノウハウ(仕組み化・スタッフ育成)を、ブランドを卸す美容室にも提供することで、他社にはない強みを作ることができます。
STEP7:M&A専門家とともに出口計画を設計する
事業化が進んだら、M&A専門家に相談しましょう。
相談すべきタイミング:
- 売却予定の2〜3年前
- 事業評価(バリュエーション)を受けたい時
- 売却可能性を診断してもらいたい時
M&A専門家にできること:
- 事業価値の算定
- 売却価格の目安を提示
- 買い手候補の探索
- 交渉のサポート
- 契約手続きのサポート
早めに専門家と関係を築いておくことで、スムーズな出口戦略の実行が可能になります。
まとめ
美容室オーナーのほとんどが知らない「出口戦略」。しかし、出口戦略を持つことで、将来の不安から解放され、人生の選択肢が広がります。
出口戦略にはIPO、M&A、事業承継、廃業の4つがありますが、普通の美容室オーナーにとって現実的なのはM&A(事業売却)です。
M&Aで売却するには、個人依存から脱却し、事業化することが必須です。特に重要なのがプロフェッショナルブランドの構築。
オリジナル商品を開発し、店舗ビジネスとブランド事業の二軸経営を確立することで、サロンの価値は飛躍的に高まります。
ONLYPRODUCTSのmm.(ムム)で商品販売のノウハウを学び、OEMBANKで独自ブランドを立ち上げる。この流れで、出口戦略を見据えた事業化が可能です。
「このままでいいのか?」という不安を抱えているなら、今が準備を始めるタイミングです。あなたの美容室経営の未来は、あなた自身が創ることができます。
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