TOPICS

なぜ美容室経営はうまくいかない?職人思考オーナーが知らない6つの誤解

2025.12.23

多くの美容室オーナーが、「売上が伸びない」「スタッフが定着しない」「自分ばかりが働いている」といった悩みを抱えています。

技術を磨き、お客様のために全力を尽くしているのに、なぜか経営はうまくいかない。その原因は、技術力不足ではありません。

原因は、「経営者としてのマインドの欠如」です。

2024年度、美容室の倒産件数は197件と過去最多を記録しました。

倒産した美容室のオーナーの多くは、優れた技術を持っていました。しかし、技術だけでは事業は継続できません。

美容室経営を成功させるには、職人から経営者へのマインド転換が不可欠です。

この記事では、美容室の経営がうまくいかない本当の理由と、オーナーが陥りがちな誤解、そして経営者マインドを身につける方法を解説します。

美容室倒産件数の推移グラフ

美容室の経営がうまくいかない5つの理由

美容室の経営がうまくいかないのには、明確な理由があります。こちらでは、多くのオーナーが気づいていない5つの原因を解説します。

1. どうなりたいのか決めていないから

多くの美容室オーナーは、「どうなりたいのか」という明確な目標を持たずに経営しています。

「とりあえず売上を上げたい」「いつかは店舗展開したい」といった漠然とした願望はあっても、具体的なビジョンがありません。

目標がなければ、迷走するだけなので、結果として、目の前の業務に追われるだけで、戦略のない経営を続けてしまいます。

例えば、「年商2,000万円のサロンにする」という目標と、「事業を売却する」という目標では、取るべき行動がまったく異なります。

  • 1店舗を極めるのか?
  • 店舗展開を目指すのか?
  • ブランド事業を立ち上げるのか?
  • 将来的にM&Aで売却するのか?

ゴールが決まっていないまま走り続けても、たどり着く場所はありません。まずは「自分がどうなりたいのか」を明確にすることが、経営の第一歩です。

2. 美容業界の市場が変化しているから

美容業界は、かつてないスピードで変化しています。しかし、多くのオーナーは、その変化に気づいていない、または対応できていません。

美容業界の構造変化

  • 倒産件数の増加:2024年度は197件と過去最多
  • 人口減少:日本の総人口は前年より55万人減少
  • 技術の差が見えにくくなるSNS時代:顧客は技術よりも「見た目」「雰囲気」「口コミ」で選ぶ
  • 価格競争の激化:低価格サロンとの競争

これらの変化には、従来の「技術で勝負する」というビジネスモデルが通用しなくなっていきます。

物理的に難しい環境で、昔と同じ方法で戦おうとしていることが、経営がうまくいかない大きな理由です。

市場の変化を認識し、新しい戦略を立てることができるかどうかが、生き残りの分かれ目です。

3. すべて自分で背負ってしまっているから

「自分が一番技術がある」「自分がやらなければ」という思い込みから、オーナーがすべてを背負ってしまうケースが非常に多く見られます。

よくあるパターン

  • オーナーの指名売上が全体の70〜80%を占める
  • スタッフに仕事を任せられない
  • 自分が休むと売上が落ちる
  • すべての判断を自分でしようとする

これは一見、責任感が強いように見えますが、実は組織を弱くする最大の原因です。

オーナーがすべてを抱え込むことで以下の問題が起こります。

  • スタッフが成長しない
  • 組織に仕組みができない
  • オーナー自身が疲弊する
  • 事業がスケールしない

「売上=自分の指名売上」という価値観から脱却しない限り、経営は一生楽になりません。

4. 職人と経営者・オーナーの違いを理解していないから

多くの美容室オーナーは、美容師(職人)として独立していますが、「経営者」というまったく別の仕事も求められます。

しかし、職人思考のままでいる美容室オーナーが多いため、以下のような問題が多発しています。

  • 技術にしか目が行かない: 経営戦略、マーケティング、財務管理を軽視する
  • 数字ではなく感覚で経営する: 利益率、キャッシュフローを把握していない
  • 経営の学びを避ける: 「経営は難しい」と決めつけて勉強しない
  • SNS・マーケティングから逃げる: 「技術があれば客は来る」と思い込んでいる

「技術の努力が、結果を生まなくなる瞬間」は必ず来ます

その時になって慌てても遅いです。今から、経営者としてのマインドを身につける必要があります。

美容師と経営者の違いを以下の表にまとめました。

項目職人経営者
価値の生み方自分の技術で価値を生む仕組みで価値を生む
売上構造働かないと売上ゼロ働かなくても売上が動く
再現性自分の経験と勘での判断組織とマニュアルで動く
判断基準感覚・経験数字・データ
時間の使い方現場作業経営・戦略立案
学ぶこと技術・トレンド経営・マーケティング・財務

5. 経営者の仕事を勘違いしているから

「経営者なんだから、現場には立たずにマネジメントに専念すべき」という意見もあります。

しかし、それはすでに仕組みで動いている1→10,10→100のフェーズの話や組織力や規模が大きい組織での話です。

0→1のフェーズでは、経営者・オーナーが背中を見せて動く必要があります。

新しいメニューを導入する時、新しいスタッフを育成する時、新しい事業を作る時。こうした「0→1」の段階では、オーナー自身が率先して動き、成功事例を作ることが重要です。

仕組みが出来上がる前に現場を離れてしまうと

  • スタッフが何をすればいいか分からない
  • 品質がバラバラになる
  • 結果が出ず、施策が失敗する

経営者の仕事は、「何もしないこと」ではありません。「仕組みを作り、それをスタッフに引き継ぐこと」です。

0→1はオーナーが作り、1→10はスタッフに任せるという順序は間違えないようにしてください。

美容室オーナーが抱えがちな6つの誤解

こちらでは、経営がうまくいかなくなる美容室オーナーが陥りがちな6つの誤解を解説します。

誤解① 技術があれば客はついてくる

現実:技術の差は顧客に伝わりにくい、選ばれるのは「そこでしかない体験価値」

多くのオーナーは「技術を磨けば、お客様は必ず来てくれる」と信じていますが、それは幻想です。

なぜなら、顧客は技術の細かい差を判断できないから。

例えば、あなたがどれだけカット技術を磨いても、お客様には「A美容室とB美容室のカット技術の違い」は「どちらも上手」としか感じられません。

お客様が美容室を選ぶ基準は主に以下の5点のいずれか、または総合点です。

  • 見た目:Instagram・TikTokでのビジュアル
  • 雰囲気:サロンの内装、スタッフの雰囲気
  • 口コミ:Googleマップ、ホットペッパーのレビュー
  • 価格:分かりやすい料金設定
  • 利便性:立地、予約の取りやすさ

技術はもちろん大切ですが、技術だけでは選ばれません。技術力を「価値」として伝える力が必要です。

誤解② 値上げすると客が離れる

本質:離れるのは価格ではなく「理由が伝わっていない」から

「値上げしたらお客様が離れてしまう」という恐怖から、適正価格で提供できていないサロンは非常に多いです。

しかし、実際には価値が伝われば、適正価格で売れます。

値上げで客離れが起きる本当の理由は以下の通りです。

  • 値上げの理由を説明していない
  • 価値の向上を提供していない(値上げだけして何も変わらない)
  • そもそも価値が伝わっていない

逆に言えば、値上げは「価値の再定義」のチャンスです。

新しいトリートメントメニューを追加したり、使用する商材をグレードアップしたり。

はたまた、カウンセリング時間を充実させたり、アフターフォローを強化したり、こうした価値向上と合わせて値上げすれば、お客様は納得してくれます。

そして何より、安売りは自分の首を絞める行為です。低価格で勝負し続ければ、利益は出ず、スタッフに十分な給与も払えず、結果として経営が苦しくなります。

誤解③ 広告費は無駄

実際:認知がなければ技術も価値も伝わらない、広告は投資の一部

「広告にお金をかけるのはもったいない」「口コミだけで十分」と考えているオーナーは少なくありません。しかし、知られなければ存在しないのと同じです。

どれだけ技術が優れていても、どれだけ素晴らしいサービスを提供していても、認知されなければお客様は来ません。

広告費は「コスト」ではなく「投資」です。

  • Instagram・Facebook広告
  • Google広告
  • ホットペッパービューティー
  • 地域情報誌

これらに適切に投資することで、新規顧客を獲得し、売上を拡大できます。重要なのは、ROI(投資対効果)で判断する思考を持つことです。

広告費10万円 → 新規顧客20人獲得 → 売上50万円 → 利益15万円

このように、投資したお金が何倍になって返ってくるかを計算するのが経営者の思考です。

誤解④ スタッフとは仲良くすべき

真実:仲良しでは組織は動かない、「信頼と仕組み」が組織運営の核

「スタッフとは仲良くしたい」「家族のような雰囲気のサロンにしたい」という想いと信頼関係は違います。

仲良しを重視しすぎると、以下のような問題が起こります。

  • 評価・指摘をすると空気が悪くなると思う
  • 甘えの関係になりスタッフが成長しない
  • 責任の所在が曖昧になり、組織が弱くなる

プロの組織には、適切な距離感が必要です。

  • 明確な評価基準
  • フィードバックの仕組み
  • 役割と責任の明確化
  • オーナーとスタッフの線引き

信頼関係とは、互いに尊重し合い、役割を果たし合う関係です。仲良し重視では、組織は成長しません。

誤解⑤ 経営は難しいし自分には向かない

事実:経営は「知識・仕組み・習慣」、才能ではなく取り組み方

「経営は難しい」「自分には向いていない」と決めつけて、学ぶことを避けているオーナーが多くいます。

しかし、経営は学べるスキルです。

美容師としての技術も、練習を重ね、先輩に学び、経験を積んで身につけたはずです。経営も同じで、学び、実践し、改善するという繰り返しで誰でも身につけられます。

経営を学ぶための第一歩

  • 完璧を目指さず小さく始める
  • 税理士、コンサルタント、成功している経営者から学ぶ
  • 経営の基礎を本で学ぶ(月1冊からでOK)
  • セミナーに参加し、先輩経営者と交流する

「難しい」と決めつけるのではなく、「学べばできる」という姿勢を持つこと。それが経営者マインドの第一歩です。

ONLYPRODUCTSでは、mm.(ムム)という美容室オーナーが代理店事業を通じて、メーカー事業や経営を学べるブランドがあります。

気になる方は、以下の記事でmm.(ムム)の解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。

>>「mm.(ムム)」とは?サービス内容や強み・おすすめの人を解説!

誤解⑥ オーナーが働かないと申し訳ない

危険:組織を弱くする最大の原因、オーナーは「未来をつくる役割」

ずっと現場に立ち続けているオーナーは非常に多いですが、これは組織を弱くする最大の原因です。

オーナーの本当の仕事は「経営」ですので、現場に立つことが美徳ではありません。

オーナーのやるべきことは大きく分けて以下の6点です。

  • 戦略を立てる
  • 仕組みを作る
  • スタッフを育てる
  • 新しい事業を考える
  • 財務を管理する
  • 未来を創る

オーナーが現場に張り付いていると、以下のような問題が起こります。

  • 経営業務に時間を使えない
  • スタッフの成長を奪う
  • オーナー依存の体制が固定化する

自分が働き続けることで、実はスタッフの成長機会を奪っていると認識し、オーナーは、現場を離れ、経営に専念する。それが組織を強くする唯一の方法です。

ファイナンスと未来を作る

経営者マインドを持つ上で、最も重要なのが「投資思考」です。

多くの美容室オーナーは、ずっと同じことを繰り返しています。同じメニュー、同じ集客方法、同じ運営スタイル。しかし、ずっと同じことをしている美容室は伸びていません。

市場や顧客のニーズは変化し、競合も増えています。その中で生き残るには、どんどん新しいことに挑戦していく必要があります。

そのためにも「お金を使って、より大きなお金を稼ぐ」という投資マインドが必要です。

手堅い事業を立ち上げ、成功したら次の事業へというように、ひとつのことを深掘りして、成功すればその体験を横展開していくという戦略がおすすめです

無形・有形に関わらず、今までやってきた資産をお金に変える発想を持つことが、経営者としての成長につながります。

通常業務で蓄積されていっている美容室やサロンには以下のような資産があります。

  • 技術・ノウハウ
  • 顧客データベース
  • ブランド力
  • SNSフォロワー

これらを「ただ持っているもの」として放置するのではなく、「収益化できる資産」として活用する。それが投資思考です。

ファイナンスを理解し、投資マインドを持つことで、美容室経営の未来は大きく変わります。

経営者マインドがないことで起こる7つの問題

経営者マインドを持たないまま美容室を経営すると、様々な問題が発生します。こちらでは、実際に起こる7つの問題を解説します。

売上が頭打ちになる

技術に注力することで、サロン全体が属人化してしまいます。

オーナーの技術に依存し、オーナーの指名売上が大半を占める状態では、売上の上限が非常に低くなります。

なぜなら、オーナー1人が対応できるお客様の数には限界があるからです。

  • 1日に対応できる人数:最大8〜10人
  • 月の稼働日数:22〜24日
  • 客単価:1万円

この条件では、月の売上上限は200〜240万円程度です。それ以上は、どれだけ技術を磨いても伸びません。

売上を伸ばすには、仕組み化してスタッフが売上を作る体制を構築する必要があります。

業界の平均給与が圧倒的低水準のまま

美容業界の給与状況

引用:「美容師の平均年収は?データから読み解く役職別給料と収入アップの方法」

2025年の平均年収は〜

美容業界全体の課題として、平均給与が非常に低いという現実があり、他業種と比較しても圧倒的に低い水準です。

理由は、技術勝負になっているからで、働いた時間=売上という構造では、どうしても収入に上限ができます。

この構造から脱却するには以下のような方法が有効です。

  • 物販(商品販売)で粗利率を上げる
  • ブランド事業を立ち上げる
  • 複数店舗展開で規模を拡大する
  • 高単価メニューの開発

経営者マインドを持ち、事業として取り組むことで、業界全体の給与水準を上げられます。

優秀なスタッフが辞める

優秀なスタッフほど、成長機会を求めています。

しかし、オーナーがすべての判断をし、すべての責任を負っている環境では、スタッフは成長できませんし、現場が活性化しません。

その結果、任せてもらえない→成長できない→給与が上がらない→将来が見えないという悪循環になり、やる気のある優秀なスタッフが辞めていきます。

また、経営的判断がないサロンでは、他の美容室の「キラキラしたもの」に惹かれていきます。

  • 「あの店はブランド商品を扱っている」
  • 「あの店は教育制度が充実している」
  • 「あの店は給与が高い」

優秀な人材を定着させるには、成長機会と将来性を提示することが不可欠です。

一生現場で休みにくい

現場を回すことに終始してしまうと、オーナー自身が休めない状態が続きます。

「自分が休むと売上が落ちる」「スタッフに任せられない」という状況では、以下のような問題が起こります。

  • 体調を崩しても休めない
  • 家族との時間が取れない
  • 精神的に疲弊する
  • 新しいことを学ぶ時間がない

また、人を雇っても辞めていくことで、慢性的な人手不足からオーナーが現場に立つことを強いられますし、成長発展していきません。

これでは、経営者ではなく「働き続けなければならない労働者」です。

仕組み化することで、オーナーは現場から離れ、経営に専念するのが本来の経営者の在り方です。

経営判断が遅くなる

現場を回すこと、技術を上げることに終始した結果、市場の変化に対応できなくなります。

経営者として重要なのは、市場の動きを察知し、素早く判断することです。しかし、現場に張り付いていると、こうした情報収集や分析をする時間がありません。

その結果、競合の変化に気づかなかったり、新しいトレンドに乗り遅れたりといった問題が出てきます。

トレンドや、顧客ニーズの理解が古いままになっていると、値上げの理由もなくなりますし、タイミングがあったとしても逃すでしょう。

経営判断が遅れることで、機会損失が積み重なり、競合に差をつけられてしまいます。

事業の資産価値がつかず出口戦略がない

美容室に限らず、事業とは、その事業に資産価値をどれだけ上げられるかを追求する活動であるとも言えます。

しかし、美容室事業だけでは、資産価値がつきにくいです。

特に、オーナー依存度が高いサロンは、オーナーが抜けた瞬間に売上がゼロになるためM&A(事業売却)の対象になりません。

そもそも、多くのオーナーは、事業を行うという発想そのものがありません。

  • 「美容室=技術サービスを提供する場所」
  • 「引退=廃業」
  • 「売却なんて考えたこともない」

しかし、20代・30代のうちから出口戦略を考えて美容室を経営すると、40代・50代で「このままでいいのか」と悩むことが少なくなります。

経営者として「出口」を見据えることで、今やるべきことが明確になります。

出口戦略で取り得る選択肢

  • M&A(事業売却)で売却益を得る
  • 事業承継でスタッフに引き継ぐ
  • フランチャイズ化してロイヤリティ収入を得る
  • ブランド事業として継続

出口戦略について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

→ 関連記事:「美容室オーナーが知らない出口戦略とは?」

経営者のマインドセットを身につけるならmm.(ムム)

美容室の経営がうまくいかない理由は、技術力不足ではなく、経営者マインドの欠如が最大の原因です。

職人思考から経営者思考への転換が必要です。技術を磨くことは素晴らしいことですが、技術だけでは事業は継続できません。

仕組みで価値を生み、複数の収益源を確保することが、これからの美容室オーナーに求められます。

代理店ビジネスであるmm.(ムム)は、技術サービスだけに依存しない新しい収益源を作るサポートをしています。

まずは代理店ビジネスからスタートし、将来的には独自ブランドの立ち上げ、そして出口戦略(M&A)まで見据えた事業化が可能です。

「どういうマインドで美容室を経営したらいいのか」と悩んでいるなら、今が変わるタイミングです。

気になる方は、以下の記事でmm.(ムム)の解説をしていますので、まずはこちらを参考にしてみてください。

>>「mm.(ムム)」とは?サービス内容や強み・おすすめの人を解説!